アルメニア人ジェノサイド
生き証人・目撃者の証言 Witness
以下に示す内の「青書＝1916年英国議会報告書」は、正式には〔1915～16年オスマン帝国アルメニア人の処遇〕という題名で、各方面の人々による150に及ぶ証言録を収めるとともに、アルメニア人ジェノサイドの組織的、計画的、かつ政治的動機の性格を記述しています。（日本アルメニア研究所。なお，訳者注は中島偉晴）
† アルメニアの事件についての情報
ドイツ誌「ゾンネンアウフガング」1915年10月
「アルゲマイネ・ミッションズ・ツァイトシュリフト」1915年11月
（［ ］内は後者のみ、<
>内は前者のみに、各掲載された。）
5月10日から30日、ディヤルベキル、マムルト・ウル・アジズ（カルペルトのこと:訳者注）両州で、アルメニア人等クリスチャン1,200人が逮捕された。・・・
[5月30日、逮捕された内の674人は、モースルに送られると伝えられ、ティグリス川の13艘のバージに乗せられた。憲兵は半数がバージに乗り、残り半数は土手を駆った。発ってまもなく、捕われ人は、持ち金全部と衣類を奪われた後、川に放り込まれた。土手の憲兵は彼らを一人として逃すなと命令されていた。犠牲者たちの衣類は、ディヤルベキルの市場で売りに出された。]
<ディヤルベキルでは、アルメニア教会の僧侶5、6人が身包み剥がれ、タールを塗りたくられて、市中を引きずり回されたと言われる。>
[彼らは、そこが定住地であると言われ、砂漠状荒蕪地へと行進させられた。テル・アルメン（バグダッド鉄道沿い、モースルの近く）や近隣の村落で、約5,000人が虐殺された。人々は、生きたまま井戸や火中に投げ込まれた。・・・]・・・
[ほぼ毎日、死体がユーフラテス川を漂流してくるのが観察された。それらはしばしば、二体から六体が繋がって群れを成していた。男性の死体は多くの場合ひどく荒されていた（性器は切断されているとか等々）。女性の死体は裂かれていた。・・・岸辺に張り付いた死体は犬やハゲタカに貪り食われている。この事実を証明する多くのドイツ人目撃者がいる。バグダッド鉄道の従業員は、ビレジックの収監所は、毎日決まって満員になり、夕刻には空になる‐‐ユーフラテス川へと、という情報をもたらしている。ある騎兵隊長は、ディヤルベキルからウルファの街道全道にわたって、数え切れないほどの死体が埋葬されずに放置されているのを見た。］
路上で産気づいた婦人も休息なしの旅を続けなければならなかった。ある婦人は夜、アインタプ市近傍で双子を生んだ。翌朝、彼女は子を負って再び歩き続けなければならなかった。二時間後、彼女は倒れた。子どもを茂みに残さなければならなかった。彼女自身は隊とともに歩き続けるよう強制された。他の婦人の場合は、憲兵に歩行を強制されたため、直に倒れ死んだ。マラシュ・アレッポ間で、似た種類のできごとが幾度も起きた。・・・
この年は熱暑が殊の外厳しく、女性や子どもの多くは行程の序盤で亡くなった。・・・
† エルズィンジャン
Erzindjan
デンマーク赤十字看護士 Miss Flora A.. Wedel Yarlesberg （「青書」62）
6月7日、エルズィンジャン市からの最初の移送が始まった。・・・彼らはカルペルト（経由都市:訳者注）に行くことになっていた。２万～２万5,000人の移送が三日間にわたって続いた。多くの場合、子どもたちはムスリム家族に預けられたが、後日、当局はそれらの子どもも追放に処されねばならないと布令した。
6月11日、正規軍部隊が「クルドの秩序を保つために」送られた。次いで我々は、これらの兵士から、無防備のアルメニア人の最後の一人に至るまでがどのように虐殺されたかを聞くことになった。虐殺は4時間にわたった。女性たちは、彼らの子どもをユーフラテス川に投じ、自分もうずくまるようにして身を投げた、等々。・・・「それは恐ろしかった」若い兵士は言った。「私は撃てなかった。撃っているふりをしただけだった」。これについては、テュルクが不承認や哀れみを表しているのをしばしば聞いた。兵士たちは、死体を川に運んで虐殺の跡を拭い去るための牛車が用意されていたと、語った。・・・
それ以降、追放の移送隊は次々と到着しており、全員が虐殺地への途上にあった。私たちが多くの地域から得た異口同音の証言からすると、彼らの運命は疑いのないものであった。後刻、ギリシャ人運転手は、犠牲者は両手を背中で縛られて、崖から川へ突き落とされたと、語った。・・・シスター・Ｂと私は、自分たちができることは何かと考え、カルペルトへ向かうこれら移送隊の一つに付いて行くことに決めた。まだ、私たちは、移送中の虐殺が政府の命令によって実行されているとは知らなかったので、憲兵に残虐行為を止めさせたり、また、私たちはクルド語を喋れ、クルドの部族に影響力をもっていたので、クルド人の襲撃を喰い止めることができるであろうと考えたのであった。・・・
6月17日の夕方、途上、ある憲兵に遭った。彼は、ここから数分のところで、バイブルト市からの大移送隊が停止させられていたと語った。彼は、男たちが一人一人どんな風にして虐殺され、ゴルジュの深みへと投げ落とされたかを、ぞっとさせられる様な鮮やかさをもって語った。「殺せ。殺せ。彼らを押し倒せ！」。彼は語った。いずれの村でも、女性がどんな風に乱暴されたか。彼自身もある少女を手に入れようと望んだものの、彼女はもう処女ではないと言われた。子どもたちが泣き叫んだり、行進を妨げたりしたとき、彼らの頭が打ち砕かれ、脳みそがどういう風にたたき出されたか。「三人の少女の裸体があった。俺は彼らを埋めてやった。一つ良いことをした」。これが彼の結語であった。
ある日、私たちはある移送隊に出逢った。彼らは、栄えて幸せな生活を送っていた村々に別れを告げて、今、カマフ・ボガズ＊への途上にあった。私たちは、彼らが通り過ぎていく間、道路わきに止まっていなくてはならなかった。その光景は、私たち二人にとって忘れられない。男性は高齢者が僅かいるだけ。大勢の女性たち‐‐彼女らは生き生きした容貌の、堂々とした姿。かわいい子どもたちの群れ、幾人かは美しいブルーの目をして。一人の小さな娘は彼女の目に映ったすべてが珍しいのか、微笑んでいた。しかし、ほかの人々はすべて、死に向かい合ったような厳粛な顔つきをしていた。もの音一つとしてなかった。すべて静寂。彼らは順々に進んでいった。子どもたちはだいたい牛車に乗っていた。こうして、彼らは通り過ぎていった。・・・
＊
原著注 カマフ・ボガズ: エルズィンジャンの西方、徒歩で12時間位。ユーフラテスが岸壁の迫った峡谷を流れている処。
† エルズルム Erzeroum
全ロシア都市連合会長B.H.Khounountz ”Horizon” of Tiflis,
1916.2.25 （「青書」55）
4月5日～18日、コンスタンチノポリスから受けた命令に基づいて、テュルクは大会合を開催した。ホジャたちは、戦線における敗北の責任をアルメニア人に負わせ、公然と虐殺を唱導した。アルメニア人は彼らに訴え、慈悲を懇願したが、無駄であった。エルズルムの総督（タフシン・ベイのこと。後年、同氏は裁判で証言:訳者注）はアルメニア人を容赦する方に傾いていたものの、帝都からの命令が彼を束縛した。
エルズルム州におけるアルメニア人の追放は、6月4日に始まった。それは突然に実行され、アルメニア人を驚かせた。夜、憲兵は村々に送り込まれ、家に侵入し、男性を家族から引き離し、追放した。エルズルムの男性の追放は、都市部に限っては、過酷さの程度がやや緩く行われ、総督は15日間の猶予を与えた。
しかし、避難者は、残忍な憲兵やチェテスに護送されて以降は、多くの人々が最も残酷なやり方で虐殺された。彼らの行き先、そこはエルズィンジャンの西方のカマフというところであったが、辿り着いたのは僅かであった。・・・
サフラスティアン A.S.Safrastian Tiflis, 1916.3.15 （「青書」57）
6月4日、エルズルム平野（標高1,950ｍ:訳者注）に居住したアルメニア人農民の最初の一群、およそ1万5000人が憲兵によって家から引き出され、エルズルムの西方に当たるママハトゥンへと向かわされた。彼らは、刑務所から放たれた犯罪人から成るチェテスの集団によって護送された。・・・毎晩、人々は貢物を強制的に課せられた。やがて、持っているものを何でも、お金、衣類、馬等々を強奪された。少女や婦人は、テュルク人村落を通る度に、テュルクの間に分配させられた。ママハトゥンのかなた、2、3時間のところのカマフ・ゴルジュと呼ばれる峡谷の入り口で、この移送隊は「正体不明の強盗どもの待ち伏せ」に遭った。連発ピストルの射撃を合図にして、一斉射撃の火がアルメニア人に浴びせられた。この一群の中の生存者の一人、18歳の若者が語るには、銃火に圧されて女性や泣く子供たちの悲鳴や叫び声は狂乱そのものであった。多くの人が逃げようと試みたが、彼らは護送者によって銃火を浴びせられているのを知った。峡谷は、2時間の内に、埋葬されざる遺体の広大な墓場へと転じた。こうして処理された一万5,000人の中から、数人が逃げ、テュルク農民に姿を変えてエルズルム市に辿り着いた。
6月18日、今度は都市の番であった。・・・彼らは、財産をひとまとめにして、アメリカ使節団の代表でアルメニア教会にいるステイプルトン氏に預けた。・・・指導的な160家族が最初の移送隊に選ばれた。彼らは皆富裕で、教育があった。エルズルムのドイツ人将校は、彼らの大黒柱である夫たちから引き裂かれたアルメニア婦人に対してひどい振る舞いをした。実際には、そのドイツ人は、別離の悲しみにある婦人がどうあるべきかの模範を示してもらったようである。武官シャープナー（？）（エルズルム副領事のシュープナー・リヒターのことか:訳者注）は、美しいチリンガリアン嬢を自分のものにしようとした。だが、彼女は叫んで抵抗したので、市中を引き回される粗野な待遇を受けた。
（先述のユーフラテス川の峡谷地帯での射殺と投げ落としに触れて:訳者注）ザルーヒという中年の女性は、ユーフラテス川に投げ込まれた際、大石の陰に隠れ、しがみついて助かった。後刻、岸に這い上がり、テュルク人の友の家に匿ってもらい、エルズルムに戻った。彼女は、エルズルムの「全露都市連合」の代表者に語った。数百人の子どもたちがテュルクによっていかに銃剣で突かれ、ユーフラテスに投げ込まれたか、また、男や女が裸にされ、百の単位で縛められ、撃たれ、そして川に投げ込まれたかを思い起こして身震いがした。エルズィンジャン近くの、川が曲がりくねっている辺りでは、数千の死体が堰を形作った結果、ユーフラテス川はおよそ100ヤードにわたってその流路を変えてしまったとも語った。ともあれ、この最後の移送隊の何人かは、この恐怖の旅を生き抜いたようである。最近、彼らの内の誰かが、北部シリアのラッカからステイプルトン氏宛てに手紙を書いてきた。・・・
露軍の占領時、エルズルムには、およそ100人のアルメニア人および2万5,000人のテュルクがいた。30人の少女と婦人は、ステイプルトン氏宅で無事であった。
† ビトリスBitlisおよび
ムシュMoush 〔「青書」同地域に関するイントロより〕
5月末、ヴァンの殲滅を諦め、南西方向へ撤退したジェヴデトは、ボータン川を渡り、彼が「屠殺」大隊と呼ぶ8,000の兵士を伴い、サイルトに入った。そこで、クリスチャンのほとんどを虐殺した。アルメニア教会僧侶イェギシェ・ヴァルダペトおよびカルデア教徒僧侶アッダイ・シェールを公共広場で焼殺するよう兵士に命じたのは彼であったと伝えられた。彼は、次いで、6月半ば、ハリルの部隊を伴ってビトリス市に向かった。同月25日、テュルクはビトリスの町を包囲し、近隣のアルメニア人村落との連絡を絶った。その上で、壮健な男性をほとんど、家宅捜索と称して家族から引き離した。数日後、男性は全て町の外で射殺され、犠牲者自身に掘らせた深い溝に埋めた。若い女性と子どもは野次馬の間で分配された。残りの者は、南に向かわされ、ティグリス川で溺死させられたといわれる。このようにして、ビトリス市のアルメニア人1万5,000は処分された。・・・
ムシュでは、7月初、武器の押収を迫った当局によって、町の指導的人物や村の名士は、胸の悪くなるような拷問にさらされた。指の爪、次いで足指の爪が剥がされた。彼らの歯はたたき出された。ある場合は、鼻を削ぎ落とされた。犠牲者のある者はショックと長引く苦痛の下で死に至った。犠牲者の救護にやってきた親類女性は、体を不自由にされた夫や兄弟の目の前で、公然と乱暴された。犠牲者たちの悲鳴や死の叫びが空にこだました。だが、それもテュルクの獣性を未だ揺り動かすには至らなかった。・・・
ムシュ孤児院のドイツ人使節 Miss Alma Johannsen（「青書」23）
ロシア軍がムシュから15時間ほどのところにある町リーズに達した。このことは、テュルクの頭から離れなくなったため、虐殺はさし当たって延期された。しかし、ロシア軍がリーズを離れるや、アルメニア人が居住しているすべての地域は劫掠され、破壊された。
ビトリスに虐殺すべきものがもう残っていないとなると、彼らの注意はムシュに転じられた。・・・ムシュ市は大きな町で、2万5,000のアルメニア人が居住した。周辺には、いずれもほぼ500世帯から成る村が300あった。
7月の最初の週に、2万の兵士が軍需品と大砲11門を備えてコンスタンチノポリスからカルペルト経由で到着し、ムシュを包囲した。実際は、町は6月中旬以来すでに包囲されていた。郡政長官は私たちに、町を離れてカルペルトへ行くべきであると指示した。
7月10日、ムシュは、アルメニア人が逃亡を試みたという口実で、数時間にわたって砲撃された。・・・私たちは、孤児院に火が着くのを恐れて、皆地下貯蔵室に避難しなければならなかった。家々で焼け死んでいく人々や子どもたちの泣き声や叫び声を聞くのは、胸の張り裂ける想いであった。兵士たちはそれを喜んでいた。・・・生存者は、といっても病人の女性や子どものほかには誰もいなくなったが、ウルファへ移送された。私は郡政長官のところに行き、せめて子どもたちには慈悲をと請うたが、無駄であった。彼は、アルメニア人の子どもは民族ともども滅びなければならないと答えた。病院と孤児院から皆が追放された。三人の奉公人を残してくれた。こうした極悪な情況のもと、ムシュは焼け落ち、滅びた。どの将校も、テュルキイェからアルメニア人を取り除く役割で、自分がどの位の数を虐殺したかを自慢にしていた。
ケイバン村から追放された婦人の話： ヴァルトゥケス氏に伝えられ記録された
1915.7.25 （「青書」24）
ムシュから追放されたアルメニア人全員は、殺されたか、ムラート川（東ユーフラテス川のこと:訳者注）で溺死させられた。
テュルクは、ソルダール、‐‐、‐‐等5村のすべての婦人と子どもを集めて、ジアレトに行進させ、そこで、ケイバン、‐‐、‐‐等5村の住民を加えた。彼らは（私たちは、のこと:訳者注）すべて、ムラート川にかかる橋に向け移送された。途上、ヘルゲルト、‐‐、‐‐等16村の家族が隊に合流し、全部で、8,000から1万人に及ぶ隊列を成した。老婦人や歩行困難な弱者は殺された。ほぼ百人のクルド人護衛が付いていて、私たちの生命は、彼らが思うがままであった。私たちのいる前で少女をレイプするのは、彼らにとって普通のことであった。しばしば彼らは8歳ないし10歳の娘に暴行を加えた結果、多くが歩けなくなり、撃たれて死んだ。・・・奪われた赤子たちは目の前で殺された。・・・ある者は逃げるのに成功し、暗くなるまで畑地に隠れた。この地域の山々を知っている者はこうして逃げ、愛する者を探しに戻った。ある者はサスンへと向かった。・・・
私たちは途上、クルドからこんなことを聞いた。チェテスがクルド・メイダンおよびシェクランの全住民、およそ500人の女性、子どもを集め、チェテスの頭領であるラシド・エフェンディの命令により、彼らを焼殺した。
私たちはジャバグチョウルとの境に着いたとき、狭くなった流域を通過した。ここで、護衛はユーフラテス河畔に座って休憩するように指示した。・・・30分後、私たちはクルドがジャバグチョウルからこちらに向かってくるのに気付いた。彼らは、私たちを囲み、川を渡るよう命令した。多くが従った。銃声が、泣き喚いたり、叫んだりする声を打ち消さんばかりであった。パニックの中、私は幼児を背に負い、川に跳び込んでいった。泳ぎが巧かったので、対岸に辿り着くことができ、彼らが去るまで、身を隠した。（後刻、婦人は、ムシュの平野に戻り、アルメニア人が大勢いると聞いた聖カラペト修道院・教会のある山の麓の森に隠れた。:訳者注）
避難民による情報：Armenian Journal ”Ararat” of London, 1916.3 （「青書」25）
聖カラペト修道院は略奪され、盗まれた。テュルクは墓を開け、すべてを壊した。秘密の小部屋をも発見した。テュルクの首領は、修道院の一角を取り上げ、アルメニア人少女たちを閉じ込めた。
他の情報によれば、ムシュにアルメニア人は誰も残っていない。ドイツ孤児院にいた孤児さえも。彼らは殺されるか、追放された。同院の教師グリゴルとマルカル・グカシアン氏は殺された。マルガリータ・ナルバンディアン嬢とマリツァ・アリスタケシアン嬢の唯2人が死を免れた。彼らはメズレのドイツ神学校の卒業生であって、親切なドイツ女性のお蔭をこうむっている・・・
虐殺は、ヴァンの総督ジェヴデト、司令官ハリル、ビトリスの総督アブデュルカラク、ムシュの総督セルヴェトによって実行された。虐殺命令は、7月11日に出された。テュルク政府の統計によれば、ムシュ地域で12万人のアルメニア人が殺された。
アンドラニク・ヴァルタニアンの証言 ヴィデオ・インタビュー 2000.2.1
（Peter Balakian：The Burning
Tigris p273,274より）
ムシュ地域に居住していたアルメニア人7万強は、その生存者がほとんどいない。
憲兵とチェテスは、勇敢にも抵抗して戦った男性を一掃した後、女性、子ども、老人を干草貯蔵所や納屋に強制的に押し込め、火を放った。このやり方で、この地域のアルメニア人は一掃された。15歳であったアンドラニクは、なんとか逃れることのできた数少ないひとりであった。ハスキョイ村から憲兵によって移送され、3日後、空腹のまま彼らはエレシュテルの町に着いた。夕方、彼らは納屋に案内され、今晩ここに逗留すると伝えられた。憲兵は、いきなり「我々数百人を納屋に押し込めた。」アンドラニクは思い出す。「我々は、イワシ缶のイワシさながらに詰め込まれた。私は、壁の上に通気孔があるのに気付き、十分な大きさであることを見て取り」、体を捩じらせて孔を通り抜け、逃げた。小さな池があったので、水辺に隠れた。水面からうかがい見ると、憲兵たちが納屋を囲み、石油をかけているのが見えた。「火が納屋を巻き込み、生きながら焼かれている友達や人々の恐ろしい叫び声が聞こえた。肉や髪の毛の燃える臭いは恐ろしいものであった」。
† カルペルトKharpert（Harput）
ドイツ人使節 Miss Alma Johannsen（「青書」23）
私たちはカルペルトに向け、発った。カルペルトはアルメニア人の埋葬地になっていた。彼らは、埋められるべくして、あらゆる方向からカルペルトに移送されてきた。そこで横たわり、犬やハゲタカが彼らの体をむさぼり食うのであった。カルペルトとメズレ（至近の双子都市。メズレ（アルメニア名はマザラ）地域は今日、エラズゥという都市になっている:訳者注）では、人々は恐ろしい数々の拷問に耐えなければならなかった。彼らは、眉毛を毟り取られたり、胸部を引き裂かれたり、爪を剥がされたりした。拷問をする者は、足を斧などで切り離したり、さもなければ、馬に蹄鉄をつける際にやるように足に釘を打ち込んだりした。
米国領事Leslie
A.Davis,1915.7.11 （「青書」65）
エルズルムとエルズィンジャンからの、およそ数千人から成ると見られる移送隊がカルペルトに到着した。私は彼らの野営地を何度も訪ね、数人と会話を交わした。・・・彼らは、ほとんど例外なく、服はボロボロ、汚れて、餓えて、病人のようであった。彼らは衣服も替えられず、洗う機会もなく、遮蔽物もなく、食べることもなしに路上にあったという事実から、それも驚くには当たらない。・・・母親たちは子どもを私たちの方に差し出し、引き取ってくれるようにと請うた。実際、テュルクは、子どもや少女を奴隷あるいはそれより悪いことに回そうと選んでいたのである。実に、かれらは、より有望そうな少女の身体検査すら医師にさせ、いわゆる極上の者を手に入れていた。
男性は僅かしかいなかった。彼らのほとんどは、途上で殺されていた。クルドに襲われ、盗まれたと、皆同じように物語った。襲われる度に、多くの人々、特に男性は殺された。婦人や子どもも殺された。勿論、多くが病気や疲労困憊のために亡くなった。ここに居る今も、毎日死者が出ている。いくつかの移送部隊が到着して、一、二日留まっては、行方もはっきりしない地へと押し出されて行くのであった。・・・
三人姉妹と話したことがある。彼らは＝＝＝で教育を受けており、素晴らしい英語を話した。彼らの家族はエルズルムで最も富裕であった。エルズルムを発つときは全員25人であったが、いま生きているのはたった14人になってしまった。彼らの中の一人の夫と彼らの年老いた祖母を含む11人は、彼らの目前でクルドによって虐殺された。家族の一番年長の男性生存者は8歳の子となってしまった。エルズルムを発ったとき、彼らはお金、馬、私財を持っていたが、衣類すら含めすべてを強奪されてしまった。彼らの内のある者はほとんど裸に、他は着ているもの一枚だけにされてしまった。ある村に着いたとき、隊の付き添い憲兵が、村の婦人たちから彼らのための衣類を調達してくれた。
別の少女は、エルズルムのプロテスタント牧師の娘である。同行した家族皆が殺され、一人だけ残された。・・・（略）
これらの人々の状態からすると、ここを去っていった、あるいは去ろうとしている者の運命は明らかである。去った者の誰からも未だなにも情報がない。・・・
全体の動向からすると、この国がかつて見た中でも最も十分に組織され、かつ効率的に行われた大虐殺であるとみられる。・・・（略）
カルペルトでは、過去数週間に逮捕されたアルメニア人男性の数は数千人に上った。彼らは収監されては、数百人ごとにまとめられ、夜間に追放された。最初の一群が、6月23日の夜、追放された。・・・彼らすべてが殺されたとの噂が頻りであった。・・・
月曜日（7月12日）、カルペルトとメズレの両町で多くの男性が逮捕され、収監された。火曜日の夜明けに、彼らは引き出され、人の住んでいない山中に向けて行進させられた。全部で800人位であったが、14人ずつのグループに捕縛されていた。午後、彼らはクルド人の小村に着き、モスクなどで夜を明かしたが、この間食料や水の供給はなかった。お金や衣類はすべて強奪された。水曜日の朝、彼らは2、3時間のところにある渓谷に連れて行かれ、座らされた。いきなり、憲兵は、彼らを射殺し始めた。銃弾で死ななかった者は、ナイフや銃剣で処理された。・・・
同じことが、村々で系統的に行われた。2、3週間前、ここから4、5時間位のところにある二つの村イチュメ、ハブゥジーでは約300人の男性が集められ、山中に連行された末に虐殺された。
ドイツ赤十字勤務 Miss Hansina Marcher （「青書」64）
カルペルトのドイツ孤児院にいたアルメニア人の子どもたちは残りの人々と共に移送された。総督は、私の命令は全アルメニア人を追放することである。これに例外は設けないと述べた。しかしながら、と彼は言った。残っている子どもたちのために政府の孤児院が設けられていると表明した。後刻、彼はシスター・ＤＡに電話で、来て、それを訪ねてみるようにと勧めた。シスター・ＤＡは彼に随行し、よい建物に約700人のアルメニア人の子どもたちがいるのを見た。12ないし15人の子どもに対して一人のアルメニア人ナースがいて、子どもたちは良い服装をして、養育されていた。・・・だが、数日後、彼女がその孤児院を再訪したところ、700人の子どもの内13人しか残されておらず、あとは消えていた。彼女は、彼らが町から6時間ほどのところにある湖に移送され、溺死させられたことを知った。続いて新たに300人の子どもたちが「孤児院」に集められていた。彼女は、彼らが先の子どもたちと同じ運命にさらされるものと考えた。これら犠牲者は、カルペルトのアルメニア人の子どもたちの残余であった。最も見栄えの良い少年や最も愛らしい少女たちは、選別されてこの地域のテュルクやクルドによって拉致されてしまっており、ここの子らは政府の掌中に置かれて、まもなく処理される残り物であった。
† ヒュセニクから移送されたマリツァ・ケジェディアン婦人の物語 （「青書」68）
ディヤルベキルを経てラスル・アインへ Alexandria 1915.11.2
・・・私たちがディヤルベキルに至近のところに着いたとき、総督からの用事で兵士がやって来た。・・・ここで、私たちに付いていた憲兵は、私たちの牛や家畜をすべて奪った。その上、女性1人と少女2人をも拉致した。ディヤルベキルの城壁の外で、焼け付くような太陽の下で24時間座っていなければならなかった。その日、大勢のテュルクが市中からやって来て、移送隊の中の小さな娘をさらって行った。夕方になる頃、私たちはまだ泣きながら、また行進をはじめた。大勢のテュルクが少女や若妻を連れ去ろうとしてやって来た。・・・数日後、白衣のテュルクが後をつけて、チャンスがあれば少女をさらっていくのであった。ＣＳ・エフェンディ（ミナス・マズマニアン:訳者注）の妻には3人の娘がいて、一人は結婚していた。付いていた憲兵の一人がこれらの少女を手に入れようと望んだ。母は抵抗したところ、テュルクの一人によって彼女は橋から投げ落とされた。かわいそうに、婦人は腕を折ってしまった。しかし、ラバ使いが彼女を引き上げてくれた。再び、同じテュルクが彼女を山の頂上部から娘の一人もろとも突き落とした。既婚の娘は、母と妹が落とされるのを見るや、抱えていた赤子を他の婦人に渡して、「母さん、母さん！」と叫びながら彼らの後を追い、同じ崖に身を投げた。テュルク将兵は彼らを探しに下りて行き、彼らに止めを刺したとのことであった。その後、ＣＳ夫人の残された娘と私は変装して、それぞれの腕に子どもを抱え、すべてを捨てて、マルディン市へと歩いた。私たちはそこで、8日間留まった。・・・彼らが他の少女を連れ去ろうとした時、私はマルディンの男性ＣＴ・チャオウシュに助けてくれるよう頼んだ。彼はすぐに、少女を連れ去るのを止めさせた。彼は、指示をするまでそこに留まって、出発しないようにと言った。・・・私たちはお腹を空かせていて、喉はカラカラに渇いていた。ＣＴは、私たちから入れ物をとり、遠くから水を持ってきてくれた。その夜、私の義兄弟である洋服屋のＣＵの妻が出産した。翌朝、私たちは発つこととなった。ＣＴは、彼女に数人の女性を付き添わせ残し、離れたところから彼女の様子を見続けた。彼は、母と赤子を家畜に乗せ、私たちが進んでいる所まで無事に運んでくれたのである。再び、私たちは六時間水なしで歩いた。そこで、一人のテュルクが、山で落とされた婦人の息子をさらった。飢餓と疲労困憊の最後の段階で、ついに私たちはヴィラン・シェールの町にたどり着いた。・・・
私たちは、ラスル・アインに到着するまで、食べ物は何もなかった。私たちが属する移送隊の中の四分の一の人がすでに餓死していた。・・・ラスル・アインに到着するまで、夜どおし行進した。縁まで死体で詰まっている井戸を三つ通過した。前を行く婦人が、これらの井戸から這い出てきた3人の負傷した女性に遭遇し、パンを求められた。3人は、群れに入り、ラスル・アインに向け、歩いた。2人は途中で死んだ。もう一人は、移送隊とともにディレル・ゾルに送られた。ＣＷの姉妹で、18歳か19歳の少女ＣＶ（アガヴニ:訳者注）がもはやこれ以上歩けないという状態になって倒れたのは、ここでのことでした。母と義姉は泣きながら彼女にキスをし、彼女をそこに残した。兵士たちは誰をも彼女とともに後に残させはしなかったため、私たちは彼女を一人で残さざるをえなかった。
ラスル・アインに至るまで、私たちは一人としてアルメニア人を見かけなかった。ラスル・アインで、私たちは、エルズルム、エギン、ケギ、その他から移送されてきた大勢のアルメニア人を知った。彼らはすべて、ディレル・ゾルへの途上にあった。ここで、私たちは、カルペルトのＣＸ・アガ（アラケル・アガ・カラッジアン:訳者注）に出遭った。彼は私たちを助けるためにアレッポからやって来たと語った。彼は私たちに、ＣＹ・ベイ（アルスラン:訳者注）というチェルケス人、すなわち彼の女婿の家に行くよう助言した。ラスル・アインでは、多数のアルメニア人がチェチェン人の家に避難所を見出していた。だが、後にテュルク政府は、彼らすべてをチェチェン人の家から退去させ、ディレル・ゾルへと追放した。41人からなる私たちの一群だけがＣＹ・ベイの家に残された。ベイと彼の友人は政府関係の人たちであったので、私たちはここで一応安全であった。・・・
ＣＸ・アガは、鉄路をアレッポに戻った。彼は私たちを救おうとあらゆる手段を試みた。15日後、彼は戻ってきた。チェルケス人は、私たちになんとかしてムスリムになるよう迫った。しかし、私たちは彼らにこう答えた。「私たちは川に身を投げます。しかし、ムスリムにはなりません」。チェチェン人は、この表明に驚いて、名誉と信仰に対してこんなにも熱心な、こんなにも互いに心身を捧げるこのような人々をかつて見たことがなかったと、言うのであった。ＣＸ・アガは、私達が改宗を勧められたのを知って、チェチェン人の族長を訪ね、彼を買収するや、卓越した勇気をもって私たちを一人一人鉄路へと誘導した。駅は約2マイル先にあった。アレッポに私たちが着いたのは土曜日の夕刻であった。（ＣＸ・アガの父は、彼らをアルメニア教会に案内してくれた。そこには、4ヶ月も移送され続けた人を初め、いろいろな地方からの生存アルメニア人が大勢いた。:訳者注）
アレッポに辿り着いたアルメニア人の情報から、私たちは、多くの婦人たちの夫は互いに捕縛されてシェイタン・デレッシ（悪魔の谷）へ連行され、斧やナイフで虐殺されたことを知った。彼らがすべて殺されたことを確信させられた今、私たちは、再び夫に見えるとの希望を捨てなければならなかった。・・・
（マリツァ・ケジェディアン夫人は、アレッポの米国領事館を訪ね、米国市民でもある自分を助けてくれるよう求めた。5日後、パスポートが発給され、地中海岸のアレクサンドレッタへ送ってもらった。15日間の滞在後、そこから、米巡洋艦上の客人となり、9月22日、アレクサンドリアに到着した。:訳者注）
† トレビゾンド Trebizond
オスマン銀行地方支店の護衛 Armenian Journal “Arev” of Alexandria,1915.10.2
コンスタンチノポリスから命令が届いた日の夕刻、当局は、インテリや政党員約40名に、海路を移送されることになると伝えた。彼らは黒海上で溺死させられた。・・・
生起しているすべての事件は、統一と進歩委員会によって組織されていた。・・・
移送される者は、お金、衣類、食料を携行することを許されなかった。500人のアルメニア人兵士は武装解除された後、追放され、その途上で虐殺された。他の追放者は、例外なく虐殺されたに違いない。というのは、ジェヴィズリク村（トレビゾンドから6時間のところにあり、ギュムシハーネに通ずる唯一の道路に面する村）から伝えられたニューズは、そのことを確実なものにしている。追放者の群れはその場所を通過するのを見られているが、他方、村の向こうでは彼らが通過するのを誰も見ていないからである。同じ頃、イェルデイールメニ川の流れは毎日、多くの死体を海に運んでいた。死体は荒らされていて、決まって裸にされており、女性は乳房を切り削がれていた。（「青書」74）
† ティグリス川の源の湖水「ゾヴーク」で起きたこと ＊1915年秋
Leslie A. Davis “Report of
Leslie A. Davis, American Consul, Formerly of Harput.” （Peter Balakian：The Burning Tigris p243--247）
あるテュルクが、ギョルジュク湖の周りで数千人の死体を見たことがあると打ち明けた。ここメズレの南東方向、馬で5時間位のところだという。彼は案内してくれた。
湖岸は高く、険しく、深い渓谷がいくつか流入していた。・・・ほかの谷間には、千を越す死体があった。・・・渓谷は、三角形をしており、両側は高い崖状の土手で閉じ込められていて、人々は襲われたら、登ることは不可能であった。両岸の2、3人の憲兵は、群集が逃げるのを阻止できた。・・・こうして、犠牲者は、文字どおり、檻に入れられた形で、冷然と虐殺された。・・・次の渓谷では、水辺の砂中から20ないし30の頭が列をなして突き出ているのを見た。テュルク的怠惰な性格を持った憲兵が、掘るのが容易かった湖岸の砂地に埋めたために、後に露出した訳である。各処で、死体を見た。崖の下の岩の上に積み上がった死体、水中や湖岸の砂の上の死体、大きな谷間を埋め尽くした死体。・・・ある谷間では、約1,000の死体、他の谷間では約1,500の死体があった。それらからの悪臭は相当ひどかったので、その渓谷をできるだけ高いところまで上がろうと馬を駆ったが、上がり切れなかった。・・・女性のほとんどは仰向けにされていて、憲兵の銃剣で野蛮な毀損を受けた痕があった。それらの毀損は、多くの場合、死後受けたものであった。・・・アルメニア人の移送とは実は何を意味したのか、今まで以上に、よく理解できた。かつて、私はマムルト・ウル・アジズ（州）をテュルキイェの「屠殺場ヴィラエット（州）」として話したことが間違いではなかったとも感じた。・・・
（10月末、アトキンソン博士と再訪したデイヴィスは、湖の東側を逍遥した。）他のどこで見たよりも多くの死体を見た。一つの渓谷では2,000を下らない死体があった。ある婦人の頭のすぐ傍に、生まれて数日も経っていないとみられる小さな幼児の死体があるのに気付いた。・・・実働24時間にわたる湖畔の視察行で、畔で殺されたアルメニア人の死骸の数は2万を下らないと推定した。・・・このようなことが、1915年夏に、美しいギョルジュク湖畔で起きたとはほとんど考えられないことである。・・・ギョルジュク湖のような場所は、アルメニア人を絶滅するための計画におけるテュルクの残忍な意図に完全に適合していた。ほかでも、このような打って付けの場所が利用されたに違いない。
（ギョルジュクは、古来ゾヴーク（アルメニア語で「小さな湖」の意）と呼ばれてきた湖名のテュルク語訳。テュルクは、ハザール・ギョルと名称を変えてしまった。エラズゥの南南東25㎞。訳者注）
† 駐コンスタンチノポリス・米国大使ヘンリー・モルゲンソウの
タラト内相との談話＊1915年
（Morgenthau：Ambassador Morgenthau’s Story. P.338,342）
「（アルメニア人の処遇について）論議しても無駄だ」と、タラトは応じた。「我々はアルメニア人の4分の3を処理した。ビトリス、ヴァン、エルズルムにアルメニア人は全く残っていない。」・・・私が「貴殿は恐ろしい過ちを犯している」と言ったところ、彼は答えた。「そう。過ちを犯しているかも知れない。だが、我々は決して後悔していない」と。・・・
・・・アルメニア人に対するタラトの態度は、友人たちに誇り高く自慢した次の高言に凝縮されていた。「アルメニア問題の解決に向けて、アブデュル・ハミドが30年かけてやったことを、私は3ヶ月で成し遂げた」。
†「ニューヨーク・タイムズ」紙スタンブル支局長ステフェン・キンツェル＊2000年
（
N.Y. Times, Stephen Kinzer, Elazig, Turkey, May 7, 2000）
自分の畑地と下方にちらちら光るハザール湖を見晴らしていたタヒル・ジャキルバイ（66歳）さんは、上方の丘を指差しながら語った。「あそこで、アルメニア人を括って、殺したのさ。親たちが私に話してくれたよ。1915年に10万人も虐殺したんだって。」・・・エラズゥ生まれで、昨年大学を卒業したヤセミン・オルハンさんは語った。「学校ではそれ（虐殺のこと:訳者注）を教えません。関心が御ありなら、発見する方法はいくらでもあるわ。多くのアルメニア人が殺されたの。それは確かよ。おばあちゃんが話してくれて知ったの。」ここでは、世代が替わろうとも、虐殺の記憶が消し去られることはなかったのである。・・・湖畔の電話局出張所のネヴザト・ゴヌルタス氏は、父が昔のことをしょっちゅう話してくれたという。・・・「他の人は、ここに住んでいないから、知らないのだ。」彼はお茶をすすり飲みながら言った。「父は言っていた。あの頃テュルクは弱かった。アルメニア人が反乱を目論んだ。彼らを殺せとの命令がやってきた。ほとんどすべてが殺された。戦争ではなかった。それは虐殺だった。」
・・・テュルクの代表的な新聞社の発行になる歴史地図は、この地域の多くが、大昔からアルメニア人が多く住んでいたところであることを示していない。・・・セルハッティン・ジナールという工場労働者は次のように語った。「ここはずっとアルメニア人が大勢住んでいた地域であった。だが、彼らは行ってしまった。死んで、殺されて、追い出された。政府はそのことを認めたがらないという訳さ。あなたは、それでもなにか言いたいのかね。私の出したヨーグルトが酸っぱかったのかい？」